めがねさんの百合ごはん雑記

百合とごはんについて。

ゴールド免許

免許の更新に行き、安全講習を受ける。
子供の飛び出しに注意しなさいと言われる。
子供は目の前のことだけに夢中になり、まわりを見ないと言われる。
子どもは視野が狭いと言われる。

思い返してみれば、確かに学生の頃は視野が狭かった。目の前の彼女のことばかり考えていて、周りが見えていなかった。今そこにあるものが大切で、自分がこれからどう生きていくべきかという指針もなく、正体のない不安に怯えて、しかし、綺麗な鞠ばかり見ていた。楽しげに弾む鞠に見惚れ、惚けて、視線を釘付けにされていた。

追いかけたかった。本当は。
本当に車が来るかどうか。幼い私には判別がつかなかった。ただ道に出れば車が来るはずだと教えられて育つということは、本当に車が来るのかどうか確かめさえしないということだった。見えもしない車に怯え、今は来なくてもいずれ来るかもしれないと、鉄の塊を恐れて、足がすくんでいた。
そして、鞠は遠くへ逃げていった。私の手の届かない遠くへ。

あの時、鞠を追いかけて道路に飛び出していたらどうなっていただろうか。
渡る道の真ん中で鉄の塊に押しつぶされていたろうか。
あるいは、優しい車は私たちを見て、止まってくれただろうか。

ぼうっとしているうちに講習は済んだ。今年も私は、いつか子供を轢き殺す恐怖に怯えてハンドルを握ることすらしない。
帰り道、金木犀の香りがしていた。