めがねさんの百合ごはん雑記

百合とごはんについて。

異能バトルのメモ

(例のラ!異能バトルの作成中のメモをここに書く。この前に十万字分ぐらいの長い経緯がある。)



集団の中で彼女はとりわけ美しく見えた。平素の制服姿と唯一違うところがあるとすれば腕に珍しく腕章をつけているところか。
生徒会長。その肩書きは伊達ではない。
「おはよう、絵里ちゃん」
穂乃果のひとことに周りがざわついた。
「タイマン相手の生徒会長にちゃん付けとは良い度胸してんなあ、流石は穂乃果ちゃんや」
つ、と脇から前へ出たのは希だった。咎めるような口調というよりは、どこか慈しみやからかいを含んでいる。
「あ、希ちゃん。おはよう。昨日はありがとね」
「ええよお。気にせんといて」
ひらひらと手を振る。
「それより今日はライブやんな?頑張ってな」
「うん!ありがとう」
「ま、うちの可愛い絵里ちやからほどほどにしてくれると助か……」
「希」
きつい口調で絵里は彼女の言葉を遮った。
「これは真剣勝負よ。手なんか抜かれてたまるもんですか」
「はは、絵里ちはカタイなあ。もっと楽したらええのに」
「私、まだあなたを信じたわけじゃないから。勘違いしないで」
絵里は言い捨てて穂乃果へ改めて視線を向ける。
「タイマンという話だったけど、三対三にするんですって?どういう心境か教えてくれない?」
「うん、1人だと勝てないから」
あっけらかんと穂乃果は答えた。絵里の眉がぴくりと動いた。
「そんな条件で私が飲むと思ったの?」
「うん。だって、この学校のテッペン決めるんでしょう。なら強い奴が勝ちだよね。私は仲間と一緒の方が十倍くらい本気出せる。本気モードじゃない穂乃果に勝ったって、絵里ちゃんはちっとも嬉しくないんじゃないかなって」
穂乃果はまっすぐに絵里の瞳を見据えた。その目は本気だ。
絵里もまた、まっすぐに見返す。
「それに、スクールアイドルとしてのライブを見て欲しいってどういうことなの」
「異能持ちが通う学校の、一番の使い手を決めるのがこのタイマンの目的だった。だからいま一番アツいやり方で戦うよ。A-RISEみたいにね」
穂乃果はじっと前を見る。その視線は絵里よりも遠くを見ていた。この学校を突き抜けてもっと先の、未来のことを。
「一人じゃへこたれちゃうからね。私は、自分のためじゃなくて、みんなを守るんじゃないと戦えない。この学校のみんなを守るために戦いたいんだ」
「……なるほど。ならこちらもそのごっこ遊びに付き合ってあげましょう」
鼻先で笑いながら絵里は言った。穂乃果は不満げに口先をとがらせる。
「ごっこ遊びじゃないよ、真剣なの!」
「A-RISEというのは、三人なのよね」
「うん」
「なら、放課後には完璧なコピーを見せてあげる。いかに自分たちが子供の遊びにすぎないかを思い知るがいいわ」
絵里はそう言い置いて踵を返した。すぐ後ろに希も付き従う。
「あーあ、三人目、見つけなあかんなァ。誰かおるかなー……っと」
ぼやきとともに、希は視線は目ざとく集団の中の矢澤にこを見つけ出していた。意味ありげに笑い、手を振る。
にこは手を振り返すわけもない。渋面を作って、ふんと横を向いた。
その横を通り過ぎる刹那、希は小声で何か囁いた。周りには聞こえないようなささやき。
その瞬間、矢澤にこの目は大きく見開かれた。そこに浮かんだのは絶望や諦観や恐怖ではなかった。
それは、まぎれもなく、喜びや希望。
希はうっそりと笑む。蛇のように目を細めて。
「どうやろ?」
「……やるわ」
にこは小さくうなづいて、自分の拳を小さく握りしめた。
「色々気にくわないけど、それならやってやる。あんたの思惑がどこにあるのかなんて、興味ない。にこに相応しい舞台があるならそこに乗るだけよ」
「いいやん。うちら、やっぱり仲間やんな」
希はそう言って小さくグーを作ってにこの肩を小突いた。にこは、また、ふんと小さく鼻で笑って取り合わなかった。
その目はこの食堂のどこも見ていなかった。遠くを、ここではないどこか遠くを見ていた。
「ほななあ。放課後の講堂で待ってるわ」
そう言い残して三年生たちは去っていった。